東龍斎一派における本歌と写しの違い
東龍斎清寿(銘 一家式)
政景(銘 政景) 寿景(銘 隷書で寿景)
この手の東龍斎風の本歌である。風神雷神の図における風神である。
鬼の顎と鼻が力強く、手足の爪が鋭い。
地の彫りが丁寧で、地金の変化の付け方がきめ細かい。
耳の打ち返しにも細かい変化がついている。写し物は地金にまで神経はまわらないことが理解できる。
また形も良い。
私は右の寿景より巧いと思う。
鬼に力強と剽軽さは出ている。ただし江戸前のすっきりした感覚より、少し野趣が出ている。
東龍斎の江戸の粋を現した作風は、少し過ぎると下手(げて)になる微妙なものだと思う。
耳の打ち返しの厚さは3枚の中間で、単調である。
形はそれなりに工夫している。
こうして3枚並べると、一番劣るが、東龍斎風の人気のある図柄であり、価格は結構する。
鬼の透かしについては写しただけで、作者としてどう表現しようかとの意図は感じられない。
作者の意図がないだけに、鬼の前に岩に何か植物のようなものを高彫りして体裁を繕っている。
耳の打ち返しが厚ぼったくなっている。その為に形に締まりが足りない感を持つ。
「江戸の鬼・明治の鬼ー浜物鐔を中心として」小笠原信夫著『刀剣美術』478号より
『金工鐔』(小窪、益本共著)より 「刀和」99年1月号より
上記の東龍斎清寿の裏(銘 竜叟法眼(花押))
東龍斎清寿(銘 我一格)
上記の東龍斎清寿の裏面の雷神である。
他の2枚と同じ向きであり、図の比較はしやすい。
表と裏で目玉の位置が違う。こちらは前を見ている。
これも東龍斎清寿の同じような図柄であるが、鬼の角や指の透かしがより鋭い。
鬼の顎の力強さも見て欲しい。
全体にすっきりしている。
耳の打ち返しも細く、こういうところにもすっきりした感覚が出ている。
地金の荒らし方も細かく、形も良い。
上記と同じ
筆者所蔵写真より

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