江戸幕末の名刀工源清麿が武器講を行い、それを中断して長州に出奔したことはよく知られている。この理由についても諸説があるが、著者は武器講をマーケティング的な視点で捉え、武器講に参加する人は清麿個人ではなく、講元を信頼して参加することであると明確にして、その講に参加する人のメリットは何かという観点から分析した。そして武器講の講元である窪田清音の事情や、当時の天保の改革の性格、および武器講の価格に焦点をあてて、これまでの通説を論破して、天保の改革とそれに伴う諸施策が武器講が中断された理由であると唱えている。
またこれまでの通説である清麿の寡作説と武器講での三両の刀価の値頃感を実証的に検証して、寡作でもなく、また刀価が特に安いものでもないことを立証して通説の誤りを述べている。