江戸寛文新刀には、山野勘十郎などによる「二つ胴切断」などの切れ味を証明する截断銘が作者銘と共に切られているものが多い。このような截断銘が流行した時代背景を実証的に述べて、これまでの「江戸の武士は大坂と異なって剛健であり、刀に切れ味という実利を求めた為に江戸新刀に截断銘が多い」と言う通説に疑問を投げかけている。
江戸時代前期における辻斬りの横行とか、歌舞伎者の横行という風潮をからめて展開し、これらの風潮と截断銘の流行が関係があることを立証した上で、本当にこのことと江戸新刀における截断銘流行を関連づけてよいのかを、いくつかの仮説を提示して幅広く考察している。あわせて、元禄時代以降に切断銘が少なくなってきた背景も考察している。
またこの論文では論を展開する前提として、試刀家の系譜と刀工の截断銘の推移なども詳しく調査している。